大阪高等裁判所 平成4年(ラ)122号 決定 1993年3月02日
抗告人 東田梅子 外3名
相手方 甲野一郎 外4名
相手方(利害関係人) 北山明夫 外1名
主文
原審判を取り消す。
理由
一 抗告人らの本件抗告の趣旨及び理由
別紙の即時抗告申立書及び同申立書訂正の申立記載のとおりである。
二 当裁判所の判断
本件記録によれば、被相続人甲野太郎(本籍京都市北区○○○○○町××番地の×、最後の住所京都市上京区、以下「被相続人」という。)は平成2年8月5日死亡し、同人には、相続人(兄、姉、ただし、相手方乙山花子と同丙川桜子は兄の丁田勉の子〔代襲相続人〕)として、抗告人らと、相手方(利害関係人)北山明夫及び同南村正夫を除くその余の相手方らがいること、被相続人の遺産としては、原審判添付の別紙目録<1>記載の土地(以下「本件<1>の土地」という。)についての共有持分の3分の1及び同目録<2>記載の建物(以下「本件<2>の建物」という。)があること、本件<1>の土地についての他の共有持分各3分の1は相手方(利害関係人)北山明夫(相手方北山冬子の夫)と同南村正夫(相手方南村夏子の夫)にそれぞれ属すること、本件<1>の土地上には、本件<2>の建物のほか、原審判添付の別紙目録<3>及び同<4>記載の各建物(以下これらの建物を「本件<3>の建物」、「本件<4>の建物」という。)が存在するところ、本件<3>及び<4>の各建物は相手方北山冬子と同南村夏子の共有(各持分2分の1)に属すること、ところで、本件<2>の建物は本件<1>の土地の東側に存在するところ、被相続人の生前に、本件<1>の土地の共有者である被相続人と相手方(利害関係人)北山明夫及び同南村正夫とが本件<1>の土地の分割につき話合い、被相続人は本件<1>の土地の東側を取得する旨の提案がなされたが、細かい詰めに至たらないうちに被相続人が死亡したので、同分割の合意は成立しておらず、その後、その相続人らと上記共有者ら間で本件<1>の土地の分割につき合意は成立していないこと、ところが、相手方(利害関係人)北山明夫及び同南村正夫は原審に利害関係人として参加し、原裁判所は、原審判主文1項記載のとおり、本件<1>の土地を原審判添付別紙図面のとおり分筆して、同分筆による東端の土地及び本件<2>の建物を3,600万円、同分筆による西端の土地並びに本件<3>及び<4>の各建物を1,390万円で相手方甲野一郎が任意売却すること等を命ずる旨の審判(原審判)をなしていることが認められる。
しかし上記認定のとおり、本件<1>の土地についてはその共有者ら間に共有物の分割の合意は成立しておらず、被相続人の遺産は本件<1>の土地についての共有持分3分の1であって、本件<1>の土地のうちの原審判において命じられた分筆による東端の土地ではなく、本件<1>の土地についてのその余の共有持分は相続人以外の者に属するものであるから、本件遺産分割審判事件において、本件<1>の土地につき原審判のとおり分筆を命ずることは許されないこと、更に、家事審判規則108条の3によれば、家庭裁判所において遺産の任意売却を命ずるためには相続人全員の意見を聴くことを要し、相続人中で競売によるべき旨の意思を表示した者があるときは、任意売却を命ずることができないところ、本件記録によれば、原裁判所において相手方乙山花子及び同丙川桜子に対し遺産の任意売却についての意見を職いていないことは明らかであり、原裁判所において抗告人ら及びその余の相手方に対し遺産の任意売却について意見を聴いてはいるが、抗告人らは、これにつき条件を提示(任意売却人を抗告人甲野二郎にする等)し、売却価額につき不満を述べる等確定的に承諾していなかったところ、抗告審において競売によるべき旨の意思を表示していることが認められるから、被相続人の上記遺産について任意売却を命ずることは許されないところである。
以上の次第で、抗告人らのその余の抗告理由につき検討を加えるまでもなく、本件抗告は理由があり、原審判は不当であるから、これを取消すこととする(なお、抗告人らは、更に、本件を原裁判所〔京都家庭裁判所〕に差し戻すことを求めているが、原審判は職権による中間審判であるから、当裁判所においてこれを取消すことにより消滅するので、本件を原裁判所〔京都家庭裁判所〕に差し戻すことを要しなく、原裁判所において引き続き本件遺産分割事件の審判をなすことになるものである。)。
三 結論
よって、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 宮地英雄 裁判官 山崎末記 富田守勝)
即時抗告申立書<省略>